パピー・夢農園 ブルーベリー栽培方法の紹介

ブルーベリーの特徴

 ブルーベリーは氷河期以降、針葉樹帯から広葉樹帯に南下しながらそれぞれの場所に堆積した土壌に馴化して進化した植物です。19世紀以降、野生種の売買がはじまり、その栽培方法や野生種からの選抜・交配などの研究が行われるようになり今に至っています。ブルーベリーの系統は、環境適応地により北部ハイブッシュ系、南部ハイブッシュ系、半樹高ハイブッシュ系、ラビットアイ系等に分類され、系統毎に数多くの品種が存在します。耐寒性、耐暑性、土壌適応性、自家不和合性などが品種毎に異なりますので、品種毎の特性を理解したうえで、栽培地に適合した品種の見極めと栽培方法の適用が好結果につながります。

 

 

 

■適応地域と栽培品種
 品種毎に耐寒性、耐暑性、耐病性等が異なりますので、環境に応じて栽培可能な品種を見極める必要があります。 一般的にはリンゴ栽培が可能な地域では北部ハイブッシュや半樹高ハイブッシュが、ミカン栽培が可能な地域では南部ハイブッシュやラビットアイが適応するといわれております。でも、実際に栽培してみると思っていた以上に適応範囲は広いようです。当地でもラビットアイ系、南部ハイブッシュ系の栽培が可能です。当園では最低気温−7℃を下ると耐寒性の低い品種の一部において凍害が発生しました。

 

 

■休眠期間
落葉果樹であるブルーベリーは休眠期があり、一定期間を低温(7.2℃以下)に遭遇することが必要です。低温要求量(7.2℃以下に遭遇した時間の累積)を満足
しないと発芽不良や花芽不足などの弊害が生じます。しっかり寒さに遭遇させてあげる必要があります。
・北部ハイブッシュ(800〜1200時間)
・南部ハイブッシュ(200〜600時間)
・ラビットアイ(400〜800時間)

 

 

 

■ブルーベリーの根
ブルーベリーの根は根毛をもたない細根であり、吸水力・吸肥力は弱く、乾燥や過湿に対し極端に弱い特徴を持ちます。
ラビットアイの根は比較的深く伸びるため、根郡の浅い北部ハイブッシュと比べると乾燥には強い性質を持っています。
根毛を持たないブルーベリーの根は、細根の先端に菌根菌が共生し、土壌中の栄養吸収を手助けします。 
根は春先に土壌温度が6℃に達すると成長を開始します。果実が成熟する夏季には成長が鈍りますが、収穫後から秋にかけて再び成長が活発になり土壌温度が
6℃以下になる晩秋まで成長し続けます。地上部の成長とは別に根は独自に成長するようです。

 

 

 

■栽培土壌と施肥
 野生種ブルーベリーの生息環境は、針葉樹や広葉樹の植生遷移の中で落ち葉が堆積し分解された酸性土壌にあります。
一般的な園芸作物の栽培では、アンモニア態窒素を与えると硝化菌の働きにより硝酸態窒素に変化し植物に最も吸収されやすい状態となりますが、酸性土壌下では硝化菌の働きが抑制され、アンモニア態窒素が維持されます。酸性土壌という環境下で成長するためブルーベリーは菌根菌の力を借りて栄養分を吸収します。

 

一般的に、北部ハイブッシュの最適pHは4.3〜4.8、南部ハイブッシュおよびラビットアイは4.3〜5.3程度。
通気性と排水性の良い用土とし、アンモニア態チッソを与えることで成長が優れると言われております。

栽培方法(土壌、肥料など)

一般的な栽培方法は参考書籍に書かれているとおりで、たいていは「ブルーベリーは無農薬で簡単に育てられる・・・」と紹介されております。しかしながら、私にとっては「ブルーベリーは何と難しい果樹なのだろうか」が実感です。 特にハイブッシュ系では、成木になって数年後に突然調子を崩して枯れてしまったり、成長とともに本来の味が出なくなったり、一旦調子を崩すとなかなか復活できない脆弱性を伺わせます。 試行錯誤の結果、現在の栽培方法にたどり着いたわけでですが、土壌環境の良好な方にはあまり参考にならないかもしれません。

 

■栽培用土と鉢など
 ブルーベリー栽培は通気性が良く、排水性に優れた土壌環境が求められ、有機質の豊富な栽培用土が必要です。
一般的には、ピートモスを基本用土として紹介されていますが注意が必要です。ピートモスは過湿気味になるとベットリとして腐臭がしてきます。健全な苗ですとポットの重さが時間経過とともに軽くなってきますが、調子の悪い苗の場合水分が吸収されず重いままで、鉢底のピートモスが腐ってきます。また、ピートモスは一旦乾燥してしまうと今度は撥水性が強くなり、なかなか吸水しません。乾燥したポットにいくら水遣りしても用土全体に浸透するには時間がかかります。ブルーベリー栽培では定番資材と言われるピートモスですが、挿し木で育てる1年目でお世話になる以外はあまり使いたくない資材です。ピートモスに代わる有機質資材としてはココヤシ、モミ殻、針葉樹チップが有効だと思います。

 

・挿し木
 ピートモスを主体に、日向土か鹿沼土、モミ殻を混合(保水性重視)
 9cmポリポットを使用

 

・幼木(2年生〜3年生苗)
 ピートモス、ココヤシ資材、パーライト、日向土、もみ殻(発酵モミ殻)、針葉樹チップを混合(通気性重視)
 18〜30cmCSポットを使用

 

・成木のポット植え(4年生〜)
 用土も前記と同様の資材を混合しますが、ピートモスの割合を極端に少なくしています。
 (40cmCSポット、不織布ポット) 

 

・地植え
 当初、強い粘土質土壌のため大量のモミ殻とココピート等をすき込んで土壌改良し高畝で植付けておりました。ラビットアイ系は良く育ちましたが、自根のハイブッシュでは苗木の段階で成長不良となったり、成木になってから突然樹勢が落ちてしまったりと散々な目に遭いました。ハイブッシュ系は樹勢が落ちると病害虫に侵され易く次第に枯れる運命をたどります。粘土の畑をいくら土壌改良しても粘土を避けることはできずハイブッシュ系には辛い環境といえます。
 試行錯誤の結果、畑の土壌改良を行わず大型不織布ポットを使ってチップ畝に埋めるという栽培方法をとっております。 用土は成木のポット植えと同様のものを使用しております。不織布ポットは、底面に透水性、側面に貫根性の加工が施されているもので、水分の流通は問題なく行われ、根は側面からチップ側に好きなだけ伸び出てきます。不織布ポットで植えつければ株間の調整や別品種への入替えも容易にできるので気に入っております。

 

 ↓60cm不織布ポット
 

 

 

■マルチ
 ポット苗は人為的に水遣りを行いますのでマルチは不要です。ただし、成木を40cm以上の大型ポットで栽培し果実を収穫するような場合は、畑と同様に有機物マルチを行うとマルチ部分には根が勢いよく伸びてきますし、共生菌の繁殖を促すための大切な層になります。地植えの場合はマルチにより水分を安定化することができますので必須です。マルチ層には共生菌の繁殖と根からの養分吸収が旺盛になるように微生物による分解を促します。細根がマルチ部分に伸びて根域が浅くなりますし、マルチ層自体も分解されて薄くなるので冬前にマルチを追加します。マルチ用資材はモミ殻、針葉樹チップ、落ち葉を使っています。特にモミ殻については微生物を利用した発酵モミ殻を使用しておりますが、根張りは良好ですし針葉樹チップの分解までも促す働きをしてくれますので、マルチ資材のメインとなっています。 

 

 

 

■水遣り
 地植えは基本的に水遣りは不要です。夏季の雨不足の際はマルチの中を見て乾燥していた時にだけ水遣りします。
ポット苗は夏季は毎日1回以上、夏季以外は鉢を持ち上げてみて軽くなっていたら鉢底から流れ出るまでたっぷりと水遣りをします。  水遣りは、樹勢や用土の排水性能を考慮し、量と頻度をバランス良く行う必要があります。ただし遣り過ぎて過湿にならないように注意が必要です。 
夏季はちょっと手を抜くと水切れとなり新梢から萎びてきますので、そうなる前にきちんと水遣りする必要があります。 ピートモスを使った用土は一旦乾いてしまうと撥水性が強くなり、水遣りをしても一つの経路で下から流れ出てしまい全体に浸透し難くなります。水遣りした後に鉢を持ち上げてみて保水状態を確認し、保水状態が悪い場合は、バケツの水などにとっぷりと漬けておくと全体に浸透させることができます。
 雨の降らない夏季はマルチ下の用土が思っている以上に乾燥する場合があります。果実が肥大する時期の乾燥は致命傷となるので、マルチ下の状況を小まめにチェックして乾燥を防ぐ必要があります。

 

 当園では潅水用の水はタンクに貯めた雨水と井戸水、夏季は水道水を併用しています。
以前は裏山から引いている湧き水をクエン酸でpH調整して使っておりましたが、クロロシスが出るので成分検査したところカルシウム・マグネシウムを多く含む硬水であることが判かりました。これらミネラル成分がリン酸と結びつきクロロシスを助長する恐れがあると判断しブルーベリーへの使用を止めました。ちなみに雨水はpH4.5〜6.0の範囲で変動するようですがミネラル成分を含まない軟水、井戸水はpH6前後の軟水です。

 

■肥料
 共生菌を意識した栽培法を試行してみたところ順調な生育をみせていますので、地植え株については共生菌の餌となる油粕のみを与えています。ポット植えの幼苗には従来より使っている有機肥料を与えております。
以下に代表的なものを記載します。

 

<麦芽発酵アミノ酸肥料「サンモルト」(4-5-2)>
 麦芽麟酵エキスが母体であり、その養分として活性化された各種アミノ酸、ビタミン、核酸物資を多く含有している有機質肥料。土壌微生物の栄養源としても優れ根圏微生物群の増殖に効果を発揮します。

 

<液肥 リカフレッシュ(6-8-4 硝酸態窒素1%、アンモニア態窒素1%))>
 元肥を少なめにし、潅水時に追肥として麦芽発酵液肥を施用しています。アルコールの醸造過程で醸成される発酵液に窒素、リン酸、カリの養分を配剤したもので、アミノ酸、ビタミン、核酸物質、糖類を多量に含有している液肥です。追肥用として実の肥大時期などに施用することもできます。
「Berry's Life 自然の休憩所」より購入。

 

<IB化成(10-10-10-1(Mg)>
 幼苗の段階で使用しています。

 

この他にもブルーベリーに適した肥料がさまざまあります。

 

 

 

■施肥時期と量
 共生菌栽培においては従来の施肥とは異なり油粕を適宜与えます。

 

 一般的な施肥については、硝酸態窒素の食物への残留抑止なども考慮し、窒素肥料の過剰施用はしないように注意したいものです。
 施肥量は参考書籍や「自然の休憩所」の指南を参考にしておりますが、多すぎないように与えたいものです。

 

 

 

<年間施用量の目安と与え方> 

 

 

・元肥
 3月上旬〜下旬(芽吹きの頃) 年間必要量の50%程度を施用します。
 鉢植えでは窒素1〜2g程度
 露地植えでは窒素5〜10g程度

 

・追肥
 5月上旬、6月上旬等、液肥(リカフレッシュ・スーパーリカ等)を調整しながら施用します。 

 

※花芽形成のため肥料を切る期間:7月上旬〜8月下旬

 

・お礼肥
 8月下旬〜9月上旬
 年間必要量の30%程度を施用し、10月下旬には肥効が切れるようにします。

 

※休眠のため肥料を切る期間:11月〜2月

摘果・摘蕾、剪定

■摘蕾・摘果
 3年生までは花芽を全て摘み取り、株の育成を優先します。4年生で樹高1m程度に成長した株であれば、1株あたり300〜500g程度の着果に止めるように花芽の調整をします(太い結果枝の花芽を20個〜30個程度)。収穫後の生育に問題がなければ翌年は1kg、翌々年は3kgというように段階的に収穫量を増やしていけば樹へのダメージも少ないと思います。

 

・花芽の摘み取り時期は早いほうが良い。
・剪定時の切り返しで花芽数を調整(基部の結果枝を残す)。
 開花・結実の傾向として、長・中結果枝では基部と先端部の花芽の開花が早く、中央部の開花は遅い。果実の大きさも、基部と先端部が大玉となり、中央部の果実が小さい傾向にあるようです。先端の花芽をそのまま残してしまうと枝の伸張が抑制されるため、基部の結果枝を残すように切り返しで花芽数の調整をすると大粒が揃うようです。

 

・短小結果枝の果実は小玉になるので花芽部分又は枝を切除。 
・花芽のみで葉芽の付いていない枝は果実の肥大が望めないので切除する。 

 

 

■剪定
剪定の目的は、栄養成長と生殖成長のバランスを保ち、安定した生産と経済樹齢を伸ばすことです。 株の高さや幅を調整し、株内部への日射しが行き渡るよう株の配置を整えることや、剪定による新梢の充実、花芽量の調整による収量・品質の安定など、ブルーベリー栽培では欠かせない作業であり、最も難しく、コアとなる技術だと思います。

 

剪定の時期は、株内の炭水化物の流転後の休眠期に行います。私は1月下旬〜2月下旬頃に行っています。  
ポイントは
・幼木には花芽をつけない。
・幼木は強い剪定を避けるが、シュート発生を促すため弱小枝や下垂枝は除去する。
・株内部へ向かう枝が混み合わないよう除去し、太陽光線が入るようにする。
・側枝を誘発し樹形を拡大するためには切り返し剪定が有効である
・切り返し剪定は外芽の上部で切除する。
 樹形拡大のため、新梢の伸長が外芽(外側の葉芽)側に伸びるように想定する。
・ハイブッシュは枝齢が4年、ラビットアイでは7年を過ぎると生産力が低下するので、成木では主軸枝の更新、古い枝の間引きが重要となる。 短い弱小結果枝を着けた古い主軸枝は間引き主軸枝の若返りを図る。
・剪定ばさみを使う。
 剪定ばさみには受け刃と切り刃があり、枝を残す側に切り刃を当てること。 受け刃に比べ切り刃の刃渡りが長いので、枝に対しては受け刃で押さえ、切り刃で「引き切り」が行われる。その結果切り口が滑らかになり、反対に受け刃側の枝は潰れる。

 

<夏季剪定について>
・春から夏にかけて勢いよく伸びる徒長枝の成長が止まった頃(初夏)に切り返すと、その後の成長で側枝の誘引が期待できます。
・風通しや日当たりを良くし病害虫の発生を防止します。
 樹の中央部に空間を作るように、内向きの混みいった枝や、実の成りカス、細くて弱い枝は概ね8月末までに切除します。

 

<栄養成長と生殖成長>
栄養成長とは、植物が発芽後葉や茎などの栄養器官だけを分化・形成すること。生殖成長とは花芽をつくり、花を咲かせ、実を結んで種をつくることです。生殖成長は栄養成長が進んだ状態で行われますが、窒素過多等で栄養成長が旺盛だと生殖成長を妨げるので、施肥時期と施肥量のバランスを取ることが大切です。

 

一般に、弱い剪定は枝が込み合い、弱く細い枝が伸張し強い新梢の発生が不足します。反対に強い剪定は強い新梢が発生し、栄養成長が盛んになり花芽の着生は減少します。 樹勢の弱い品種・株は栄養成長を旺盛にするため強い剪定が効果的ですが、逆に樹勢の強い品種・株で強剪定をした場合は、栄養成長が強すぎて強いシュートの発生が多くなり、花芽の着生が少なくなるので弱めの剪定が良いとされています。

 

<植物ホルモン>
「せん定を科学する」菊池卓郎・塩崎雄之輔 著)によると、成長に影響する代表的な植物ホルモンは「サイトカイニン」「ジベレリン」「オーキシン」、 発芽条件は、サイトカイニンとジベレリンが蓄積され、オーキシン濃度が薄いこと。

 

早春、地温上昇に伴い根が活動開始(地温7℃以上か)→サイトカイニンとジベレリンが枝の先端に上昇(経路は幹の木部の導管)→新葉でオーキシンが作られる→オーキシンは重力方向へ移動(経路は形成層の外側の樹皮の師部)。先端の新梢が優位に成長するしくみはこのような植物ホルモンの働きによるものです。
このような植物ホルモンの働きにを理解した上で剪定を行うと、さまざまな剪定の教えを理解しやすいと思います。