系統別の特徴
ブルーベリーはツツジ科スノキ属の低木植物で、酸性土壌の不毛地帯で優先的に群落をつくり、その中で自然交雑を繰り返し種を分化させて現在に至っています。 野生種は熱帯山岳地帯から温帯および、亜熱帯まで400種類ものブルーベリーが分布しています。北アメリカ大陸では先住のインディアンが野生のブルーベリーを数千年もの間に亘って採取し生食や保存食および薬として利用していたそうです。
17世紀、イギリスからの入植者を飢えから救ったのは先住インディアンの生きるための知恵、とりわけ自然に自生するブルーベリーを利用する技術が非常に重要な位置づけだったと言われています。
現在園芸作物として取り扱われているブルーベリーは、アメリカ大陸の北東部から南部フロリダ州まで広範な気象条件の地域に自生している数種類の野生種が改良されたもので、「ローブッシュ系」「ハイブッシュ系」「ラビットアイ系」に大別されます。ハイブッシュ系は更に「北部ハイブッシュ系」「南部ハイブッシュ系」「半樹高ハイブッシュ系」の3種類に分類されます。 HPでは当園で栽培している北部ハイブッシュ(半樹高ハイブッシュ含み)、南部ハイブッシュ、ラビットアイ品種を紹介させていただきます。
■北部ハイブッシュ系品種
寒冷地での栽培に適した品種。香りと風味、酸味と甘味が調和した優れた果実品種を誇る系統です。
ハイブッシュ系品種の栽培には特に通気性・排水性に優れた土壌が必要なのですが、此処の土壌は粘土質で水捌けが極めて悪いため、現状の土壌では勿論育ちませんし、ピートモスやココヤシ資材を混合しただけでは根域の通気性・排水性が保てず生育不良となります。粘土質が根域に入らないように改良して育てることが前提となりますが、魅力的な品種が揃っている北部ハイブッシュ系品種ですので、それらの中から適応できる品種を絞り込み、特徴を引き出せるよう栽培技術を磨きたいものです。
■南部ハイブッシュ系品種
暖地での栽培に適した品種。
北部ハイブッシュ系の優れた果実品質と、ラビットアイ系の暖地適応性を備えた系統です。土壌適応性も高そうなので、今後栽培にチャレンジしてみたい系統です。
■ラビットアイ系品種
暖地での栽培に適した系統です。土壌適応性、耐暑性、耐乾性に優れ、強健で育てやすい系統です。粘土質の畑でも籾殻・ピートモス・ココヤシ系資材等の投入でほとんどの品種は自根栽培が可能なようです。また、ここ石巻での冬季の最低気温は氷点下8℃程度まで下がりますが、今のところほとんどの品種は良好な成長を見せています。樹上での熟成期間の長い品種が多く、熟成させた果実の味は素晴らしいです。他花受粉のため複数品種との栽培で結実が高まります。種子のザラザラ感が少ない品種を中心に選択したいと思います。
北部ハイブッシュ系品種
アーリーブルー | |||||||
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1952年発表(スタンレイ×ウェイマウス)
当園では食味が安定しないため現在は栽培中止。 |
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パトリオット | |||||||
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1976年発表(U53×アーリーブルー) |
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デューク | |||||||
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1986年発表 |
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レカ | |||||||
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1988年発表
花数多く豊産だが、玉揃いが良くないため摘果が必要。酸味が強いためしっかり完熟させてから収穫したい。収穫期間は長く、独特の風味を楽しめる。 |
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ハナンズ・チョイス(Hannah's Choice) | |||||||
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2000年発表(G136×G358)
梅雨の長雨での落果・裂果もなく食味も安定している。 |
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ノースランド | |||||||
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1967年発表(バークレー×19H) |
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スパルタン | |||||||
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1977年発表(アーリーブルー×US11-93)
土壌適応性は極めて低く、ブルーベリーのなかで最も脆弱な品樹といわれている。栽培においては水の滞留・過湿には最大の注意が必要で、ピートモス・ココチップなどを主体とした排水性・通気性の良い土壌への改良が前提となる。当園の粘土質土壌では土壌改良しても自根栽培は困難であり、ラビットアイ台木による接木栽培が有効である。 |
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ブルーレイ | |||||||
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1955年発表 |
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ブルーチップ | |||||||
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1979年発表(Croatan×US193) |
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ブルークロップ | |||||||
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1952年発表
しかし、梅雨時期に長雨や高温多湿となる当園の環境ではすす病や斑点性の病気が発生しやすく果実品質が不安定となるため栽培を中止。 |
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カーラズチョイス(Cara's Choice) | |||||||
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2000年発表(G114×US-165)
主力として育てていきたい品種ではあるが、梅雨時期の湿度の影響が大きい当地ではマミーベリーの症状が出易いので、小まめに草刈を行うなど風通しを良くし、地際での結実を避け高所側に成らせるなどの予防策が必要である。 |
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エチョータ | |||||||
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1999年発表(E-33×NC683) |
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ミーダー | |||||||
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1971年発表(アーリーブルー×ブルークロップ) 土壌適応性高く自根栽培が可能。
耐病性に優れている。 |
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チャンドラー | |||||||
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1994年発表(ダロウ×M-23)
果実生産力は安定しているが、成熟期間が長く完熟しないと酸っぱい。樹上でしっかり完熟させてから収穫したい。大粒で程よい硬さの果実は食べ応えがあり、酸味と甘みを持ち美味しいが、熟期を過ぎると味が抜けるなど収穫のタイミングが難しい。甘酸のバランスや風味ではブリジッタに一歩およばず。 降雨量が多く湿度も高い当地の環境下では、すす病や斑点病に注意が必要。 |
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コビル | |||||||
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1949年発表(GM37(Jersey×Pioneer)×Stanley) |
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レイトブルー | |||||||
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1967年発表(ハーバート×コビル)
収穫期はコビルより1週間程遅く北部ハイブッシュ系ではエリオットに続く最晩生種。果実生産性が高く成熟期が揃う。果実は硬質で品質は安定、熟期の判定は容易であり完熟後も長く風味を保つ。風味は良く酸味の強い果実はしっかり熟成させて収穫したい。当園ではコビルより樹勢・果樹品質が安定しており晩生の主力品種。 |
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ブリジッタ | |||||||
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1978年発表(レイトブルーの自然受粉) |
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ネルソン | |||||||
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1988年発表 |
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ルーベル | |||||||
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1911年発表(野生種の選抜)
アントシアニン含有量は他のブルーベリーの2倍程度と突出しており機能性に注目されている。加工素材としての評価が高いのだが、生食では酸味が少なく甘味があって美味しい。 |
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オーロラ | |||||||
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2003年発表(Brigitta×Elliott)
甘味・酸味のバランスが良く収穫期の判定も容易 |
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リバティ | |||||||
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2003年発表(Brigitta×Elliott)
米国パテント品種
直立性 樹勢強く多収量
甘味・酸味のバランスがよく収穫期の判定も容易 |
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南部ハイブッシュ系品種
オニール | |||||||
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1987年発表(ウルコット×Fla4-15) |
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サミット | |||||||
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1998年発表(G144×E14-76) |
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サウザンスプレンダー | |||||||
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2010年発表(リベイル×Palmetto) |
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ノーマン | |||||||
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2015年発表(G556×レガシイ) |
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ビューフォート | |||||||
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2005年発表(NC1406×ペンダー) |
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ファージング | |||||||
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2007年発表(FL96-27×Windsorの交配) |
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ケストラル | |||||||
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2011年発表(FL95-54×FL97-125の交配) |
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メドーラーク | |||||||
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2010年発表(FL84-33×FL98-183の交配) |
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ラビットアイ系品種
クライマックス | |||||||
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ラビットアイ系の中では比較的樹高が低く、樹形も穏やかである。 |
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ティフブルー | |||||||
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(エセル・クララの交配種) |
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パウダーブルー | |||||||
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(メンデイトゥー・ティフブルーの交配種) |
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ブライトウェル | |||||||
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(ティフブルー・メンディトーの交配種) |
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ブライトブルー | |||||||
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(エセル・キャラウェイの交配種) |
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オースチン | |||||||
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食味 果実は明青色、果肉硬く風味は良い。 |
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ホームベル | |||||||
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1950年発表(ラビットアイの代表品種) |
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オンズロー | |||||||
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2001年発表 |
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バルドウィン | |||||||
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1985年発表(ティフブルー×GA6-40) |
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ヤドキン | |||||||
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特徴 1997年発表 |
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コロンバス | |||||||
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2002年発表 |
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タイタン | |||||||
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2012年発表
完熟の判断が難しい |
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モンゴメリー | |||||||
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1997年発表 |
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オクラッカニー | |||||||
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2002年発表 |
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